あなたの腕時計は何の素材からできているのでしょうか? また,何色のものでしょうか?
今回はよく使用されている金属素材,そしてそれらの特徴などについてまとめてみました.
(主にステンレスについての記事となっています)
目次
あなたの腕時計は何製?
あなたの持っている腕時計は何でできているのでしょうか?
大きく分けて2つの種類の素材が用いられています.
金属製
(iPhone6sにて撮影,TAG Heure Carrera Calibre5)
一般的な腕時計はほとんどが金属製でしょう.しかし,金属といっても色々な種類があり,それらの特性についても大きな差が生じます.
今回の記事では,こちらの金属素材について紹介をしていきます.
(ちなみに,この腕時計は私が実際に使用しているものです.金属製(ステンレス製)となっています.この腕時計についての詳細はこちらの記事に書いていますので是非)
とにかく数多くの素材があります.あなたの腕時計はどの素材を使用しているのでしょうか?
プラスチック(ラバー)製
(iPhone6sにて撮影,カシオスタンダード(通称チプカシ))
続いてこちらは金属製ではないものの代表格.プラスチック(ラバー)素材の腕時計となっています.
金属製でないということにより,
1.軽量
2.傷に強い
3.安価
といったようなメリットが存在します.このような素材の腕時計の代表格としては,こちらの「チプカシ」や「G-Shock」などがあります.(チプカシについてはこちらの記事に紹介がありますので是非)
こちらについてはあまり深くは紹介をしませんが,金属にはないメリットも多くある魅力的な素材だと感じました.
ステンレス
ステンレスとは?
「汚れのない鉄」という意味となる金属素材「ステンレス スチール(Stainless Steel)」.現在様々なところで目にする代表的な金属素材となっています(電車の手すりや台所のシンクなど).
このステンレスの特徴は,
1.錆びにくい
2.強度が高い
3.比較的安価(種類によってさまざまではあります)
といったことが挙げられます.
また,これらの特徴から腕時計の素材としても最もよく使用されている金属素材です.それでは,ステンレスについて詳しくみていきましょう.
定義
定義は次のようになっています.
ステンレスは鉄(Fe)を主成分(50%以上)とし、クロム(Cr)を10.5%以上含むさびにくい合金
(ステンレス協会HPより引用,http://www.jssa.gr.jp/contents/about_stainless/)
このようになっています.要約すると,「鉄を主原料として少量のクロムなどの素材を混ぜ込んだ合金」ということになります.
ます,鉄は原子番号26の「Fe」であることは多くの方がご存知でしょう.そして,鉄はさびやすい,つまりは酸化されやすい性質を持っていることもご存知でしょう.鉄は単体ではすぐにさびてしまって使い物にならないのです.さびにくくするために何か工夫をしなくてはならないのです.
また,ステンレスはたくさんの種類があり,種類によってはニッケルやマンガンといったその他の金属を配合しているものもあります.この配合によって金属の性質(重さや硬さ)などを変化させているのです.
さびにくい仕組み
(これがよくみられる鉄が錆びた様子.赤さび(Fe2O3)です)
鉄はさびやすいものです.そこで,ステンレスはクロム(Cr)を一定以上(10.5%以上)配合しています.このクロムがさびにくいポイントとなっています.
というのも,ステンレス中のクロムは酸素と反応しやすく,真っ先に「酸化被膜」(正確には不働態被膜)というとても薄い(数ナノメートル)膜を作ります(この酸化被膜は酸化クロム(Ⅲ),Cr2O3という物質です).この酸化被膜によってステンレスの表面をあらかじめ覆わせているのです.イメージでいえば「メッキ」のようなものです.この膜により,これ以上錆びることはないのです.
ステンレスは無敵?
ステンレスは酸化被膜というものを形成させていることによって酸化しにくいものだと紹介しましたが,いつでもさびにくいといえるのでしょうか?(この言い方的にそうではないのですが(笑))
ステンレスにも弱点はあります.それは,「塩分」です.海水などが例として最適ですね.
というのも,海水などには塩が溶けています.その塩の化学式はNaClであることはご存知ですよね.その塩が水に溶けたときにはイオン化するとナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl+)が水中に形成されます(中学の化学でやりましたね).このうち,塩化物イオンが酸化被膜(不働態被膜)を破壊してしまうのです(細かいことは専門的ですので割愛).特に,ステンレスに傷がつき,その間に海水が侵入した状態を放置すると錆びてしまう危険性が高まります.
簡単に言うと,ステンレスは海水に弱いということです.しかし,これらの反応はじっくりと時間をかけて進行するものです.海水に数時間浸けたからといってすぐさま錆びるものではないのです.
海水浴などで腕時計を使用した後にしっかりと水洗いをし,塩分を取り除くことが大事になってきます.このひと手間によって,ステンレスが錆びることを防ぐことが可能になります.
ステンレスは高級腕時計にも
ステンレスは比較的安価ではありますが,金属の配合を変えることにより抜群の強度を示すようにもなります.そのことにより,高級腕時計メーカー(オメガやロレックス,パテックフィリップなど)でも使用されています.
中でもロレックスでは,「904L ステンレス スチール」という高純度の高級なステンレスを使用しています.このステンレスは本来は宇宙関連事業や化学分野で使用されるもので,貴金属(金やプラチナ)といったものに匹敵するほどの耐蝕性(たいしょくせい,サビなどに対する耐性)を有しています.
主な高級ステンレス時計
ROLEX EXPLORERⅡ(エクスプローラーⅡ)
ロレックスのスチール腕時計です.(個人的に好きなだけ(笑))
価格は70万円程度と大変高額ですが,使用しているのは貴金属ではありません.ステンレスにはステンレスの良さがあるのです.(この腕時計の紹介はこの記事でしています.また,ロレックスHPに詳細があります)
また,その他のモデルでも多くはステンレス製となっています.
Patek Philippe ノーチラス
世界三大高級腕時計メーカーの中でもダントツのトップと言われているスイスの超高級腕時計メーカー「Patek Philippe(パテックフィリップ)」.そのラインナップにもステンレス製のものはあります.
それがこちらの「ノーチラス」.なんと価格は400万円!!プラチナ製のものでこれだけの値段がするならまだわかりますが,こちらは正真正銘のステンレス製となっています…
というのも,こちらのノーチラスは高級腕時計としては異例の「ステンレス製」として世界を席巻した腕時計と言われているものとなっているのです.(私にはゴールド製の「カラトラバ」が200万円なのにステンレス製のこちらが400万円となるのは少しわかりかねます(笑))
まとめ
今回は「ステンレス」にフォーカスした紹介をしましたがいかがでしたでしょうか?
日常用品にも多く採用されているステンレス.それも配合や製法によって性質や価格もさまざまになることがお分かりいただけたでしょうか.
ステンレスというありふれた素材も,長年の研究・開発によって今後も様々な進化がみられることでしょう.
これで今回の紹介を終わりにしたいと思います.
ご覧いただき,ありがとうございました.